店前の人通りは多いのに売れない理由とは。アパレル店舗の入店率と店前通行量分析
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都市型アパレルでは、ここ数年「店前のにぎわい」と「売上」の関係が噛み合わない状況が目立っています。
繊研新聞の記事*1では、百貨店やファッションビルで来店客数は改善傾向にあるものの、衣料品の購買が伸び悩むケースが続いていると指摘されています。矢野経済研究所の調査*2でも、アパレル市場全体は回復基調にある一方で、消費者の購買が以前ほど強く戻り切っていない状況が示されています。
このことは、「街に人は戻っている」「館・商業エリアとしての来街者は増えている」といった外部指標の改善が見られる一方で、衣料品売上がそのまま比例していない。来店機会の回復が、そのまま購買の回復につながらないというギャップを示しています。
こうした流れを踏まえると、現場で起きている違和感──店前は人が多いのに入店率が上がらない、店内は思ったほど活気が戻らない──は決して個店の問題ではなく、構造的な課題といえます。
この構造的な課題を相対的に見るために、本来であれば、街や通路の人流という「母数」と、そこからの入店率、さらには購買率・客単価というプロセスを一つの流れで捉えることが欠かせません。
今回のブログでは、その構造的課題をより具体的に整理していきます。

アパレル業界で深刻化している 3 つの課題
第一の課題「店前の母数が把握できていない」
人通りは「感覚の情報」として扱われ続け、客数が弱いのか、入店が弱いのか、どの時間帯に機会損失が起きているのか判別できません。
本来なら、毎時どれだけの人が店前を通過し、そのうち何人が来店したのか。この最低限のデータがなければ、改善の焦点を定めることができません。
第二の課題「入店率の低下に気づきにくい」
観光回復やエリア再開発の影響で店前通行量は増えても、入店率はむしろ低下しているケースが増えています。
ブランドの世界観以上に、効率的な購買が重視される時代になり、入口の一歩が重くなっています。
第三の課題「本部と現場で前提がずれている」
本部は POS データが中心、現場は体感ベース。この差異により、館のイベントで通行量が増えても、なぜ売上が連動しないのか議論ができません。
VMD なのか、入口スタッフなのか、導線なのか、あるいは単に店前の母数が弱いのか。判断するための材料が揃っていないのです。
解決策は「店前を数値化し、入店率という共通言語をつくる」こと
実際、多くのアパレル店舗で最も売上に影響するのは、大規模な販促ではなく「入口の改善」です。入口でのロスが大きい店ほど、売上改善の伸び代が大きくなります。
どこに課題があるかを判断するには、まず店前通行量と入店数を必ずセットで把握する必要があります。
例えば、店前を 2,500 人が通り、そのうち 75 人が入店していたとします。入店率は 3.0%です。この時点で「店内での接客や商品力を強化する前に、入口で取りこぼしている可能性が高い」という仮説が自然に立ちます。
ここから、入店率を +5 ポイント引き上げるには何が必要かを考えます。入口のマネキン構成を変えるのか、入口に経験豊富なスタッフを配置するのか、通路側への商品訴求を強めるのか。入口改善の方向性が具体的に見えるようになります。
つまり、入口改善の価値を正しく判断するためには「店前の実数」を押さえることが前提条件になります。入口で何人を逃しているかがわからなければ、どれだけ施策を打っても改善効果を評価できないからです。

Flow の店前通行量分析がアパレル運営を変える
Flow Solutions は、入口前の通行量を計測し、「店前 → 入店 → 店内行動 → 購買」という一連の流れをひとつのストーリーとして可視化します。
Flow の店前通行量カメラは時間帯別に通行者を計測でき、本部・エリア・店舗の誰もが「この時間帯の店前にはどれだけのチャンスがあるのか」を同じ基準で判断できます。
さらに来店者分析や店舗ダッシュボードと連携することで、
- どの時間帯に入口対応を強化すべきか
- どの VMD 改修が入店率に効いているか
といった意思決定が「感覚」から「データ」へ切り替わります。
このように、店前通行量と入店数を結びつけて入店率という共通言語を持つことで、本部と現場の判断軸がそろい、「なぜその施策を打つのか」「どこを改善すべきか」が迷いなく決められます。
結果として、曖昧さのない、確信を持った店舗運営が可能になります。
参照
*1繊研新聞社《ファッションビル・駅ビル商況9月》秋物不振 改装や自社カード施策で健闘
*1繊研新聞社《これからの百貨店運営2025①》客数・客単価 コロナ禍前の課題再び
*2矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2024年)」