店舗の売上を改善しようとすると、広告、販促、VMD、接客、商品など、さまざまな施策が候補に上がります。
なかでも、売上が足りないときに目が向きやすいのが「来店客数を増やす施策」です。
しかし、すでに一定の来店客数がある店舗なら、集客を増やす前に確認したい数字があります。
購買率です。
特に多店舗を運営している企業では、一部の店舗にある大きな問題よりも、多くの店舗にある小さな購買率の差のほうが、全社売上に大きく影響していることがあります。
例えば100店舗のうち、
- 購買率上位20店舗:12%
- 残り80店舗:10%
だったとします。
この80店舗を12%まで引き上げる必要はありません。
10%から11%へ、1ポイント改善すると全社売上はどう変わるでしょうか。
同じ来店客数、同じ客単価でも、100店舗で見るとその差は小さくありません。
店舗売上は「来店客数 × 購買率 × 客単価」で考える
店舗売上は、基本的に次の3つに分けて考えられます。
売上 = 来店客数 × 購買率 × 客単価
つまり、店舗の売上を改善する方法は大きく分けると、
- 来店客数を増やす
- 購買率を上げる
- 客単価を上げる
の3つです。
売上が下がったときに、来店客数・購買率・客単価を分けて原因を見る方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
今回はその中でも、
「来店客数はあるのに、売上につながっていない店舗」
に注目します。
購買率1ポイントの差が、100店舗では約7.7%の売上差になる
分かりやすくするため、100店舗の簡単なモデルで考えてみます。
すべての店舗で、
- 1日の平均来店客数:500人
- 平均客単価:10,000円
とします。
購買率上位20店舗は12%、残り80店舗は10%です。
| 項目 | 上位20店舗 | 残り80店舗 |
|---|---|---|
| 合計来店客数 | 10,000人 | 40,000人 |
| 購買率 | 12% | 10% |
| 購買件数 | 1,200件 | 4,000件 |
| 売上 | 1,200万円 | 4,000万円 |
全100店舗の1日売上は、
5,200万円
です。
ここで、残り80店舗の購買率を10%から11%に改善するとします。
40,000人の来店から生まれる購買件数は、
4,000件 → 4,400件
になります。
残り80店舗の売上は、
4,000万円 → 4,400万円
となり、全100店舗では、
5,200万円 → 5,600万円
です。
この試算では、
全社売上で約7.7%の差
になります。
新しいお客様は増えていません。
客単価も変わっていません。
新しい店舗も出していません。
しかも11%は、上位20店舗が実現している12%にもまだ届いていません。
上位店舗との差を半分縮めただけです。
※上記は購買率の影響を説明するための試算です。実際の売上効果は、店舗ごとの来店客数、客単価、立地、商品構成などによって異なります。10%や12%を業界の基準値として示すものではありません。
購買率は「全社平均」より、似た店舗同士で比べる
ここで重要なのは、
「購買率12%が正しい」
ということではありません。
購買率は、業態、商品、価格帯、立地、店舗タイプによって変わります。
見るべきなのは、
条件の近い店舗でも、購買率に継続的な差があるか
です。
例えば、
- 同じブランド
- 似た売場面積
- 似た商業施設
- 似た来店客数
という店舗同士を比べて、一方が12%、もう一方が10%なら、その差がなぜ生まれているのかを確認する価値があります。
上位店舗の12%は、外部から持ってきた理想値ではありません。
自社の店舗が、すでに実現している数字です。
だからこそ、上位店舗とほかの店舗で何が違うのかを見る意味があります。
広告を増やす前に、今ある来店が購買につながっているかを見る
先ほどの例では、残り80店舗に毎日40,000人のお客様が来店しています。
そのお客様が店舗に来るまでに、企業はすでに多くのコストをかけています。
例えば、
- 店舗賃料
- 広告・デジタルマーケティング
- キャンペーン
- 商品
- スタッフ
- 店舗運営
などです。
お客様が来店するまでに、家賃や広告費、人件費など、すでに多くのコストがかかっています。
もちろん、本当に来店客数が不足しているなら、広告や販促で集客を増やす必要があります。
問題は、
今来ているお客様がどれだけ購入につながっているか分からないまま、さらに集客費を増やすこと
です。
購買率(買上率)の計算はシンプルです。
購買率 = 購買件数 ÷ 来店客数
500人が来店して50件の購買があれば、購買率は10%です。
つまり、約450人は購入せずに店舗を出ています。
もちろん、この450人全員が購入するはずだったという意味ではありません。
見るだけのお客様もいれば、商品を比較しているお客様、欲しい商品が見つからなかったお客様もいます。
だから100%を目指す話ではありません。
確認したいのは、
「似た店舗では12%なのに、この店舗では10%なのはなぜか」
ということです。
売上だけでは、打つべき施策を決められない
例えば、2店舗とも売上が予算を下回っているとします。
| 店舗A | 店舗B | |
|---|---|---|
| 売上 | 予算未達 | 予算未達 |
| 来店客数 | 減少 | 通常通り |
| 購買率 | 大きな変化なし | 低下 |
| まず確認すること | 集客・店前の状況 | 店舗内の状況 |
売上だけを見れば、どちらも「売上未達店舗」です。
しかし、必要な施策は違います。
店舗Aなら、広告、販促、店前通行量、入店率などを確認する必要があります。
店舗Bなら、さらに集客を増やす前に、なぜ来店しているお客様が購入につながっていないのかを確認したほうがよいでしょう。
この違いが見えないと、
広告を増やす。
キャンペーンを打つ。
VMDを変える。
スタッフにもっと販売するよう求める。
といった施策を、原因と合わない店舗に実施してしまう可能性があります。
問題は、現場が努力していないことではありません。
何を直すべきか分からないまま、みんなが頑張っていることです。
購買率は店舗別・時間帯別に見る
購買率が低いからといって、
「接客が悪い」
とすぐに決めることはできません。
原因としては、
- ピーク時間のスタッフ配置
- 欠品
- VMD
- 商品構成
- レジ待ち
- 店舗オペレーション
などが考えられます。
だから、まず原因を決めるのではなく、問題が起きている場所と時間を絞ります。
最初に見るのは、
どの店舗で購買率に差があるか。
次に、
どの時間帯で差が大きくなっているか。
そこまで分かってから、
その時間に店舗で何が起きていたのか
を確認します。
例えば、
「店舗Xの売上が悪い」
だけでは原因は分かりません。
しかし、
「店舗Xは来店客数は通常通りだが、平日14時〜17時の購買率が低い」
まで分かれば、スタッフ配置、在庫、VMD、レジの状況など、確認するポイントをかなり絞れます。
100店舗すべてを詳しく分析する必要はありません。
まず、今見るべき店舗を見つけることが重要です。
Flowで「見るべき店舗」を絞る
POSを見れば、売上や購買件数は分かります。
しかし来店客数を計測していなければ、
何人が来店し、そのうち何人が購入したか
は分かりません。
Flowでは、次の3つを組み合わせて確認します。
1. Flow AIカメラで来店客数を測る
Flow AIカメラで、店舗入口の来店客数を継続して計測します。
2. POSとつないで購買率を見る
来店客数と購買件数を組み合わせて、
購買率 = 購買件数 ÷ 来店客数
を確認します。
3. Flow Platformで店舗・時間帯別に比較する
Flow Platformで店舗や時間帯ごとの来店客数、購買率、売上を比較します。
見るのは100店舗の平均だけではありません。
例えば、
「来店客数は通常通りなのに、午後だけ購買率が低い店舗」
を見つける。
その店舗について、スタッフ配置、在庫、VMD、店舗状況などを確認していきます。
Flowで行うことはシンプルです。
来店客数を測る。
購買結果とつなぐ。
改善余地のある店舗を見つける。
そのあと原因を調べる。
来店客数と購買率を分けると、改善すべきことが見えやすくなる
デイトナ・インターナショナル様の導入事例では、Flowを活用して来店客数と売上データを組み合わせ、売上の変化が来店客数によるものか、購買率によるものかを判断しやすい環境をつくられました。
6か月間の検証では、
- 来店者数:+6.3%
- 購買率:19.9% → 25.2%(+5.3pt)
- 売上高:前年同期比 +25%
という結果が確認されています。
これは、
「購買率を上げれば必ず売上が25%増える」
という意味ではありません。
成果は店舗環境や運用方法によって異なります。
この事例から分かるのは、来店客数と購買率を分けて見ることで、売上が変化した理由を判断しやすくなるということです。
まとめ:店舗の売上改善は、今ある来店を見直すところから始められる
店舗の売上を改善する方法は、新しいお客様を増やすことだけではありません。
今回の100店舗の試算では、
- 上位20店舗:購買率12%
- 残り80店舗:購買率10%
という状態から、残り80店舗を11%にすると、同じ来店客数、同じ客単価でも、
全社売上に約7.7%の差
が生まれました。
もちろん、これは説明用の試算です。
重要なのは7.7%という数字そのものではありません。
多店舗では、それぞれの店舗にある小さな購買率の差が、全社では大きな売上差になる可能性があることです。
だから売上が足りないときは、
「もっと集客するにはどうすればいいか」
だけでなく、
「今来ているお客様が、どの店舗で十分に購入につながっていないのか」
も確認する価値があります。
Flow AIカメラで来店客数を測り、POSとつなぎ、Flow Platformで店舗・時間帯別の購買率を見る。
そこから、まず確認すべき店舗を絞ることができます。
自社の店舗に、どれだけ購買率の改善余地があるか確認する
FAQ:店舗の売上改善と購買率について
店舗の売上を改善するには、何から見るべきですか?
まず売上を、来店客数 × 購買率 × 客単価に分けて、どの要素が変化しているかを確認します。
来店客数が十分あるのに売上が伸びていない場合は、購買率に改善余地がないか確認します。
購買率10%は低いのでしょうか?
10%という数字だけでは判断できません。
購買率は業態、立地、商品、価格帯などによって異なります。
条件の近い店舗や自店舗の過去実績と比較し、継続的な差があるかを見ることが重要です。
購買率が低ければ、接客を改善すればいいのでしょうか?
必ずしもそうではありません。
スタッフ配置、欠品、VMD、商品構成、レジ待ちなど複数の原因が考えられます。
まず、どの店舗・どの時間帯で購買率が低くなっているかを確認してから原因を調べます。
残り80店舗の購買率を1ポイント上げれば、必ず売上が7.7%増えますか?
いいえ。
7.7%は、100店舗すべての平均来店客数と客単価を同じとした説明用の試算です。
実際の影響は、店舗ごとの来店客数、客単価、現在の購買率などによって異なります。
重要なのは、購買率の小さな差でも、多店舗で積み重なると全社売上への影響が大きくなる可能性があるという点です。


